東京高等裁判所 昭和58年(ラ)93号 決定
本件土地上の抗告人所有建物(原判決添付別紙物件目録(二)の2の建物は昭和二二年ころ、同1の建物は昭和二九年ころそれぞれ建築)は建築後相当長期間経過していることが認められるが、他方本件全資料によるも、本件土地の借地権の残存期間約一三年に比して短期間のうちに朽廃するに至るものと認められず、従って、特段の事情なき限り、本件土地の借地契約を、堅固な建物の所有を目的とするものに変更することを求める抗告人の本件申立ては認容すべきものであるところ、本件資料によれば、本件土地を含む四日町地区においては、地区内の土地の所有者等が、同地区商店街の発展、活性化を図るためとして再開発事業準備会を結成し、現在いわゆるディベロッパー方式による再開発計画を立てて、市街地再開発事業を推進すべく活動しており、地区内の土地所有者等の相当数の者が基本的に右事業に賛成していることが認められるが、近い将来、都市再開発法に基づく市街地再開発組合が設立され、同法に基づく市街地再開発事業として右再開発計画が実現されるであろうと予見するに足りる資料は見当らない。
そして、右再開発事業が同法に基づくものではなく、地区内の全権利者の同意ないし協力を前提として行われるものである限り、本件土地の借地権者である抗告人の同意ないし協力なしには実現不能である(抗告人が右再開発事業に参加することあるいは借地権の任意買収に応ずることを強制されるいわれはない。)し、また、仮に将来右再開発事業が同法に基づく市街地再開発組合の事業として行われることになったとしても、抗告人が現時点において借地条件の変更を得て本件土地(一二二・三一平方メートル)上に堅固な建物を建築することは、権利変換手続において定められる本件土地の借地権及び地上建物の価額、したがって、抗告人に対し権利変換によって与えられるべき施設建築物の一部等の価額又は補償金の額に影響を与え(同法第七七条第一、第二項、第八〇条第一項、第九一条第一項参照)、事業の経費を多少増加させることはあっても、このことが、右事業の実施に重大な支障を及ぼすものとは認められない。相手方は、抗告人が借地条件の変更を得て本件土地上に堅固な建物を建築すれば、現在、周囲の情勢から同地区内において自己の所有地上に建物を建築する計画を持ちながらこれを見合わせている者や空地のままにしている者に影響を与え、再開発事業の推進に重大な支障を及ぼすおそれがあると主張するが、同法に基づく再開発事業に具体的にいかなる重大な支障を及ぼすのか明らかでなく、仮に抗告人一人が本件土地上に堅固な建物を建築したことにより、右のような者が連鎖反応的に次々と堅固な建物を建築して再開発反対に回り、ために市街地再開発組合設立の要件(同法第一四条参照)を満たさなくなるという意であれば、かかる程度のコンセンサスでは当初から所詮再開発は無理であったといわざるをえないし、又これらの者が再開発事業に協力的な(積極的又は消極的)態度を改めて反対の態度に出るようなことがあるとしても、契約等によって拘束を受ける場合は別として、権利者の自由な権利行使が単に再開発計画の推進されつつあることにより左右されるものではないから、右主張は採用しえない(また、借地権が堅固な建物の所有を目的とするものとなることによる借地権割合の増加(反面の底地割合の減少)に原因する将来の権利変換手続における抗告人、相手方間の利害得失の調節は、本件借地条件変更の裁判に付随する処分において可能である。)。
そうすると、本件土地を含む四日町地区において地区内の土地の所有者等が再開発事業準備会を結成し、現在いわゆるディベロッパー方式による再開発計画を立て、相当数の者の基本的賛成を得て市街地再開発事業を推進すべく活動しているとの事実は、いまだ前示特段の事情に当たるとは認められず、他に右事情を認めるに足る資料は存しないから、抗告人の本件申立を認容し、本件土地の借地契約を、堅固な建物の所有を目的とするものに変更する旨の裁判をなすべきものといわなければならない。
(野崎 浅野 水野)